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●自立したボランティア団体

 

私がアメリカへ仙台市の方々10人ほどをお連れしたのですが、毎日アメリカのボランティアグループと話をしたり、活動の様子を見ていくなかでどんどん意識が変わっていくのです。例えば食事サービスでいいますと、アメリカの多くの自治体ではボランティア団体によるランチサービスをいろいろなところで行っています。365日サービスをしているところもあれば、土・日曜日だけ休むところもあります。団体によりサービスが違いますが、1食当たり1ドル50セント程度、日本円で150円〜180円程度を支払うとランチが食べられます。お金がない方は払わなくてもいいのです。従って工夫がしてあり、ランチサービスの入り口にサインをする場所があり、お金を入れたか入れてないか分からないようになっています。それで1食の食事ができて、少なくとも24時間はしっかりと生きていられるような栄養が摂れます。高々1ドル50セントでそのような食事を毎日提供できるということはありえません。それだけのお金では大赤字なので、数万のボランティア団体はそれぞれの自治体と掛け合い、1食2ドル程度の助成金を頂いてきてますが、それでも赤字です。ロサンゼルスでやっているある団体の例で言いますと、皆さんが食事のとき出してくれる寄付と地方政府から貰ってくるお金だけでは年間に日本円で約300万円程度足りません。不足分を寄付や、日本では罰せられますがトミクジなどをやり、赤字を埋めながら毎日のサービスを行っています。このようなちょっとした工夫で事業が成り立っています。
私と一緒にアメリカに行った仙台の方は「今までは行政側にいろいろな申し入れをして、もし行政側がやらなければ、行政側が悪いといって自分たちの活動は終っていました。アメリカのボランティア活動を見て、行政に対してこれからもいろいろなお願いをすることは変わらないが、自分達自身で解決できる、自分たちでお金も人も集めてくる構図をつくり出さないかぎり行政側も動かないだろう。自立した力を持ったときに初めて人の生活を良くすることができるし、逆に自分が年をとった時、障害を持った時に、住みやすい街になるためにも動くのは自分であり知恵を出すのも市民・個人であり、それがネットワークを作って様々なサービスを作ることが肝心である。そういうものを作る過程で自治体とのパートナーシップをどうするか、ということを考えていかなければいけないことに気がつきました」と、感想を述べてくれました。そしてアメリカボランティア研修から帰国後すぐに「シニアのためのネットワーク仙台」という組織を作って活動しています。ようやく1年目の総会が開催され、決算報告によりますと、1人会費2000円なのですが、1500万円ぐらいのお金が1年間で動いています。その中で会費の占める割合は少ないものです。後はこの団体を応援するグループができて、例えば給食サービスをする使っていない赤提灯のリフォームは全てボランティアの大工さんによるものですし、魚屋さんや八百屋さんの持ってくる素材は市場で買った値段のままでそれ以上にしないという輪が広がって、給食サービスが順調にできるようになってきています。
私どもは行政サイドにはボランティアに関心をもってもらいたいとお願いをしますし、ボランティアの側からいえばもう少し自分の持っている力や知恵を出し切ろうという呼びかけをしたいと思います。その結果、自治体とボランティアのパートナーシップが発展していくことになりますし、良い日本を作っていくことになると思います。ご静聴ありがと

 

 

 

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